迷い込んだ不思議な世界を舞台にヒロイン・千尋の成長を描いたスタジオジブリの代表作『千と千尋の神隠し』。日本の歴代興行収入第1位を長期間記録し、海外においても数々の賞を受賞した本作には、謎めいたシーンや、裏設定か?と思われる部分も多くあり、千と千尋の神隠し 考察は尽きることがありません。
今回は、『千と千尋の神隠し』ファンのために隠されたメッセージと裏設定について徹底考察していきます!
『千と千尋の神隠し』あらすじとネタバレ
両親と車で引っ越し先に向かう10歳の千尋は、不思議な町に迷い込み、そこで食事をした両親は豚になってしまいます。恐怖で逃げ惑う千尋は、ハクという少年に助けられ「油屋」という場所で働くことになりますが…。
10歳の甘えん坊で世間知らずの少女が、働くことをとおして自分を確立していき、最終的に現世に戻る話は、不思議で冒険に満ちていて、子どもも大人も充分に楽しめる作品です。
『千と千尋の神隠し』そうだったの!?知られざる裏設定
『千と千尋の神隠し』には、さまざまな裏設定があります。それぞれ個人的な考察も含めて紹介していきます。これを見ると、もう一度じっくり作品を見たくなること間違いなしです。
【「油屋」は〇〇店!?】
これは、宮崎駿監督がインタビューの中で肯定しているものなので、ご存知の方も多いかもしれません。物語の中にある「油屋」とは「風俗店(遊郭)」だというものです。昔から、遊郭には赤ちょうちんが灯されていたことや、水商売の女性は源氏名を使うことなど、一致する点も多く作品の中での油屋もそういう店であるとされています。
【千尋は名前を盗られていなかった!?】
湯婆婆との契約で、千尋は自分の名前を盗られて「千」と名付けられますが、その後、ハクと千尋が会話するシーンで千尋は現世から持ってきたメッセージカードがポケットにあるのを見つけて「自分の名前は千尋だった!」と思い出します。
もちろん、ハクの手助けがあったからこそですが、しかし、湯婆婆に盗られた名前はそんなに簡単に取り戻せるものでしょうか?そこで、千尋が契約書に書いたサインを見てみると、名前が書き間違えていることに気付きます。千尋の名前は「荻野千尋」ですが、「荻」の時の「火」の部分が「犬」になっているのです。これにより、湯婆婆の縛りが弱まったと考えられるのです。
【カオナシの正体は〇〇!?】
物語の中で大きな存在感を発揮するカオナシ。油湯の中で神様はお客様です。他、働かない人間は動物になるとされ、従業員は契約に。しかし、カオナシはそのどれでもありません。つまり、カオナシはこの世界の中での立ち位置が与えられていません。
宮崎駿監督は「カオナシは誰の心にも存在する」と言ったようですが、カオナシは、誰かに必要とされたいと願いながらも、願い叶わず自分を持て余しています。しかし、物語終盤で銭婆婆によって仕事を与えられ、居場所が与えられたことによって、表情こそ分かりませんが、とても嬉しそうな反応をみせています。宮崎駿監督は「カオナシは現代の若者をイメージしている」とも言っていたようですが、誰かと繋がりたいと思いながら、上手くできずに自分を持て余すのは、誰にでも覚えのある姿ですね。「カオナシ 正体は〇〇!」という正解はありませんが、「自分の役割を欲している何者でもない存在」を象徴していると思います。
『千と千尋の神隠し』監督が伝えたかったメッセージ
『千と千尋の神隠し』は、1人の少女が、自分を生かしてくれる誰か、誰かを大切に思う自分のために「自分で考え行動していく」物語です。そして、基本的に千尋の冒険は単独行動です。そうやって自分の力でやり遂げた事柄が人を成長させていくのだと感じる物語でもあります。
現代は物が豊かで、湯婆婆のように子どもを庇護する親も多く、それが逆に子どもの冒険を邪魔しているのかもしれません。「子どもは自分の力で人のために何かをやり遂げることで劇的に成長する」という監督からのメッセージかもしれないと、『千と千尋の神隠し』を見るたびに思います。